2人が本棚に入れています
本棚に追加
番組が終わると、アイナからのメッセージを待たずに、
「アイナの推し、正直パッとしないって思ってたんだけど、めっちゃステージで輝く人なんだね。ちょっと惚れた」
とメッセージを送った。
「ちょ! パッとしないってなにさ! ああ、でも、惚れてもらえてうれしー! 投票もよろしく」
「あ、そのことなんだけど」
「ん?」
正直に言うべきか? いいや、ここはなんとなく、濁しておいた方がいいだろう。
「さっきやったんだけどさ、ちょっと興奮しすぎて、ミスっちゃったっぽくて。違う人にしちゃったかも」
「なぬ! マジかぁ。明日からは気をつけてぇ(涙)」
「わかった。めっちゃ気をつけて投票する!」
「マジ嬉しいー! ありがとう! 心の友よ! 推し友よ!」
私は、まぁいろいろあるけれど、アイナのことを親友だと思っている。だから、心の友、と言われることが嫌だとは思わない。なんならちょっとむず痒い。
が、しかし。推し友とは……? 私はこのオーディションが終わるまで、推しの運命を見守り続ける必要があるみたいだ。
まぁ、なんだかんだ、一度番組を見ただけで、片足がずぶり、と沼にハマってしまった。友が共に沈んでくれるなら、いっそ底まで突き進んでみるのも悪くはない。
次の放送までは、アイナに勧められた動画を見ながら、毎日投票を続けながら過ごした。
アイナが「歌がうまい」といっていた子は、本当に「なぜまだデビューしていないんですか?」ってくらいにうまかったし、ダンスがバキバキだといっていた子は、はたして同じ生物なのだろうかとしばらく大真面目に考え込めるくらい、人間離れした体の動きをしていた。
音楽やダンスの知識は、ほとんどない。だから、具体的にどこがいいとか、そういうことを言葉にできない。
ただ、「すごい」と思うことの連続だった。
時々、ちょっとスキルがいまいちだな、なんてぼそっと呟いてしまって、「一体、お前は誰なんだよ」って上から目線な自分を笑うこともある。アイナに引きずり込まれた世界は、広くて、深くて、熱かった。
最初のコメントを投稿しよう!