ひさしぶり、ひさしぶり。

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ひさしぶり、ひさしぶり。

 この日のために、覚悟は決めたつもりだ。  それでも鏡の中、僕の顔は相当こわばっている。やや明るい茶髪、薄化粧、眉毛もばっちり書いた。派手過ぎなピアスもつけてるし、ネックレスもシンプルでお洒落なものを選んでいる。姉が“贔屓目抜きで、陽キャなイケメンに見える!大丈夫!”と言ってくれたから、きっとそうなのだろう。  子供の頃はかけていた眼鏡も、今はコンタクトにしている。  大学生になってイメチェンしてからは女子にも結構モテるようになった。未だに見知らぬ人相手にはアガってしまいがちだが、それも話術で多少なりにカバーできているようだ。これならきっと、今回の同窓会も無事切り抜けることができるだろう。 「……気合入れろよ、僕」  鏡の中。まだまだ緊張が抜けない顔の僕に、僕は声をかける。 「今日は、大事な日なんだからな。……だって、彼女が来るんだから」  小学校六年生の時、僕には好きな子がいた。  同じ六年三組の、岡部沙代里(おかべさより)。彼女は僕のことを覚えているだろうか。それとも忘れてしまっているだろうか。  確かに、僕はあの頃、眼鏡をかけたチビで地味な冴えない少年だった。あだ名が“のび太くん”であった時点でお察しだろう。  それでも覚えておいて欲しい、とは思う。彼女とものすごく仲が良かったとか、そういうことではない。それでもだ。 『あ、あの……岡部さん!』  六年生の秋。僕は意を決して、彼女に告げたのだ。 『僕、岡部さんのことが……す、好き、です!』  彼女は覚えていてくれるだろうか。勇気を振り絞った僕のことを、あの瞬間を。
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