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同窓会のお知らせは何度か着ていたものの、僕は六年三組のそれは悉くスルーしてきたのだった。
最大の理由は、やっぱり怖かったからだ。岡部沙代里と、顔を合わせる勇気がなかった。そりゃあ、大学生になった今の僕は、あの頃と比べたらはるかにパッとしているだろう。彼女を含め、他の者達から見てもそこまで冴えない人間には見えないはず。むしろ、あの地味なのび太くんが!?と驚いて貰えるかもしれない。
それでもだ。やっぱりあの頃の気持ちが残っている以上、緊張はするのである。ただでさえ見た目を整えて話術を磨いても、アガリ症なところが治らなかったから尚更に。
――だ、大丈夫かな。うまくいくかな。
指定された居酒屋は、大きな駅前にある特に大きな店だった。方向音痴なので、わかりやすい店で本当に良かったと思う。“アシタザカ”と書かれた看板の前、他のみんなは来ているかなと思ってうろうろしていると。
「えっと、ひょっとして同窓会に参加する人っすか?六年三組の」
「え」
声をかけられて、僕は振り返った。見ればすらっとした長身に黒髪のイケメンが立っている。六年三組、というキーワードが出て来たということは彼も元クラスメートのはず――そう思って彼を見た僕は、気が付いた。
ちょっと垂れ目気味で、日本人にしては茶色っぽい瞳。それと、少し軽めの喋り方。もしや。
「……え、榎本、くん?」
「!そ、そうっす。俺榎本!」
当たりだったらしい。彼、榎本翔は瞳を輝かせて僕の顔を覗き込んできた。ダレダレ?と尋ねたいらしい。どうやらここまで間近で顔を覗き込まれてなお、僕が誰なのかわかっていない様子だ。
「僕、鳳千春です。覚えて、る?」
「マジで?ちー?お前ちーなの!?まっじでー!?超イケメンになってんじゃん。全然わかんなかったわ!」
「僕もわかんなかった。モデルでもやってる人かと思ったよ」
「あんがと!」
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