ひさしぶり、ひさしぶり。

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 わああああ、と彼は嬉しそうに頬を染めた。僕も明るい気持ちになってくる。六年三組の中でも、翔にはかなりお世話になった。少し軽めのサッカー少年であった彼はクラスでも人気者で、地味で暗い僕とは違い元気で明るいキャラクター。けれどいつも遊びに誘ってくれたし気にかけてくれたものである。  彼のいいところは、僕みたいな運動音痴がスポーツで足を引っ張ってもちっとも怒らなかったことだ。ドッジボールだってサッカーだって、失敗しても責めない上丁寧にアドバイスをしてくれたのを覚えている。ひょっとしたら、クラスで一番の友人と呼んでも良かったかもしれない。 「今まで一度も来なかったから、今回も来ないのかと思ってたぜ。どういう風の吹きまわしだ?」  翔は僕の肩をぽんぽんと叩いて言った。 「そりゃ勇気は必要だったけど。でもやっぱり、みんなに会いたかったし。それに、今の僕ならそんな恥ずかしくもないかなーみたいな」 「恥ずかしいどころか、女子どもにモテまくるんじゃね?すげえな、今何してんの?」 「普通の大学生だよ。慶邦(けいほう)大学の法学部」 「慶邦ってあの慶邦!?超頭いいとこじゃん、すっげええええ!うわあああああ。そっかそっか。うん、年賀状やってなかったから近況知らなかったけど、お前も頑張ってんだなあ。すげえ、本当にすげえよ」 「はは」  彼が心の底からそう言ってくれているのが嬉しい。頭を掻きながら僕は、それで、と尋ねた。 「同窓会ってあんま参加したことないから、どうすればいいのかって。えっと、中に入って待ってていいのかな?それと……あ、あの岡部さんって、今日来てる?」 「あ、あー……中に入って待ってればいいと思うんだけど、その」  翔は困ったように視線を逸らして言った。そりゃそうだろう。彼も、僕が岡部沙代里に告白して玉砕した件を知っているはずなのだから。 「岡部さんはまだ来てない。でも幹事の斎藤いわく、今日来る予定だって」 「そっか」  彼は何かを言いたげに口を開いて、そしてそのままつぐんだ。どんな言葉を言いかけたのかは大体想像がつく。僕は笑って誤魔化した。  優しい翔は知らなくていいことだ。僕がどんな覚悟を決めて、この同窓会に来たのかなんてことは。
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