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最推し殺人事件
「恋獄愛一郎様、恋獄愛一郎様、今日も素敵です。ぎゃああああ!」
妻が信仰宗教に嵌まり始めたのか、僕は心配になったが、どうやら、その心配はなさそうだ。アニメのイケメンキャラクター『恋獄愛一郎』の推し活だったのだ。スラッとした顔立ちに赤髪のオッドアイ、性格は竹を割ったようなはっきりとした人物に、好物はカヌレという設定にされているキャラクターだ。
グッズは勿論、マイ食器、マイ箸、マイ団扇、マイTシャツに、スマートフォンの待ち受け画面や着信音も恋獄愛一郎一色に染め上げてしまっている。それだけじゃない、推し語りをすると止まらない、一時間二時間は付き合わされるのだ。
個人の趣味に口を挟むつもりはないが、一つだけ言いたい事があった。恋獄愛一郎は僕が作った小説のキャラクターである。アニメ化が決定し、全国ネットで放送。人気声優がキャラクターボイスを担当するや、恋獄愛一郎はたちまちうなぎ登りの人気を博したのだ。原作者と視聴者の見解はズレるのは仕方ないが、僕の意見をいうと「あんたはわかってない」と一蹴される。しかし、もとを辿れば元凶を作った張本人なのでなかなか口に出来なかったのだ。
そう、あの日がくるまでは
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