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妻の推し活は日に日にエスカレートしていった。
リビングから寝室まで恋獄愛一郎のもので埋め尽くし、僕の趣味を入れるスペースはあっという間に侵食された。喧嘩をすれば「恋獄さんに癒して貰うからもういい」と怒鳴り一人で寝てしまいもう歯止めがきかない状態だ。
僕も原作小説を進めなければいけないが、ここである考えが浮かんだ「推しの死」だ。推しが作中で死亡すれば、推し活も少しは落ち着いてくれるかも知れない。そうなれば推しが死亡するに相応しい背景を設定しなければならない。自殺にしたら「自殺の理由がないのに、自殺するのはおかしい!」とクレームを付けてくる筈だ。他殺の線で攻めたらどうか。恋獄は悪くない殺害したキャラが悪いと思ってくれる。では何故、恋獄は殺されたのか、恋獄と正反対の設定のキャラ、非モテなモブっぽい男性キャラクターが恋獄を殺害する。それなら納得してくれるだろう。
妻の気持ちを考えると、ショックで悲しみのあまり泣き叫ぶだろう。だから、恋獄はファンの子の命を守って死亡したというエピソードで締めくくろう。
僕は考案した「恋獄愛一郎殺害計画」を着々と粛々と進める。しかし推し活というある種の宗教にも似た事がああいう事になるとは想定出来なかったのだ。
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