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02.小説の執筆
部屋に戻った男は猛烈な勢いでパソコンのキーボードを叩いてゆく。金色の首輪を首に巻いたまま。次々に湧き出すアイデアに突き動かされて。もちろん、最低限の食事と睡眠はとるけれど、それ以外の時間は小説の執筆に明け暮れるばかり。金色の首輪をつけて。
「その首輪はなんだい?」
あるとき、小説書きの仲間が男にたずねた。この仲間もまたアマチュアの小説書きであり、小説を書いては公募に送り、ネットに載せていた。首に金色の首輪を首に巻いた男と同じく。
「これ? 取れなくなっちゃったんだよ」
男のその言葉を冗談と受け取った仲間は笑いながら言った。
「そんな派手な首輪、ハサミで切って取っちまえよ」
金色の首輪を巻いたままの男は苦笑しながらこたえる。
「いいんだ。この首輪を巻いてると小説のアイデアがどんどん出てくるから。おかげで今は小説をどんどん書いてる」
こいつ、ついに頭がおかしくなったか。金色の首輪を首に巻いたままの男が薄笑いを浮かべている姿に、仲間は戦慄を覚える。
仲間が帰っていくと、男はふたたびパソコンのキーボードを叩き始める。猛烈な勢いで。そんな姿を、犬の神様が物陰からそっと眺めていた……。
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