03.存亡の危機

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03.存亡の危機

 それからいくらかの時間が過ぎた頃、金色の首輪を首に巻いた男はついにひとつの長編小説を書き上げる。  人類は愚かなあまりに争いを繰り返し、ついには大規模な戦争まで引き起こしてしまう。同時に地球の資源を無駄に使うばかり。おかげで温暖化は進むばかり。高温の気候が怪しげなウィルスを生み出し、何度も感染症に襲われる。戦争と感染症が繰り返された。  そんな地球を救うために立ち上がったのが犬だった。犬は古来から人類とともにあった。狩りに従事し、番犬となった。一方で人間と友達のように心を通わせる存在となった。けれど、人類はいささか愚かであった。その愚かさが人類存亡の危機を招いた。  人類存亡の危機、それがすなわち犬存亡の危機なのである。人類が争いや戦争で殺し合えば、必然的に犬も命の危険にさらされるし、世話をしてくれる人間もいなくなる。温暖化が進み、気候変動の影響が大きくなれば、犬の食糧だって確保できなくなってしまう。  犬は人類に忠実な役割を果たす一方で、人類の愚かさを目の当たりにしてきた。虎視眈々ならぬ犬視眈々と人類に目を光らせ、ひそかに犬の危機には立ち上がろうと犬同士で決めていた。やがて、今こそ立ち上がる時がやってきたと世界中の犬が確信した。  こうして、犬と人類の壮絶な戦いが始まった。
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