04.人類は混乱

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04.人類は混乱

 そんな内容の小説をある公募に応募した男。すると、その小説は見事に大賞を射止めた。そればかりか書籍化されるとたちまちベストセラーに。小説のアイデアに行き詰まって真夜中の川の流れを見つめていた男は、またたく間にベストセラー作家となった。その上、世界中でその本が次々に翻訳されていった。  いよいよか。男が金色の首輪を拾ったときからずっと観察していた犬の神様は、このときが来たとついに確信する。  金色の首輪をつけた男の書いたその本には、その本を読んだ人間が無意識のうちに思わず口にする特殊なフレーズが書き込んであった。犬にしか通じない暗喩を秘めたフレーズだ。  そのフレーズはまたたく間に世界中で流行語となり、世界中の人々はそのフレーズを口にした。時として犬たちの前で。  そして世界中で犬たちが人類に牙を剥いた。突然の犬たちの反乱に、人類は混乱するばかり。もちろん人類とて、長年のあいだに開発してきた武器や銃火器で犬たちへ応戦したが、けっきょくは牙を剥いた犬たちの前に、むなしく降伏するばかりだった。  犬と人間の戦いの一部始終を見ていた犬の神様は、こうなったのもすべては愚かな人間の愚かしさのせいだと自分自身に言い聞かせた。人類の滅亡はすなわち、犬の滅亡だからだと。  犬と人類の戦いは百年続いたのち、ついに人類が犬に降伏した。わずかに生き残った人類は、見渡す限り水平線の離島に流された。  そして犬たちは地球の新たな支配者となった。大型犬から小型犬まで存在する犬は、人類以上の多様性に満ちていた。そんな犬たちは愚かな人類を反面教師にして、争いのない世界を築いた。それがこの平和で幸福に満ちた現在の犬の世界の始まりなのである。
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