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05.人間の銅像
「先生、質問です」
教室で一匹の犬が手を挙げた。白いプードルの中学生だ。
「はい、質問を言ってみて」
チワワの教師がプードルの生徒に告げる。教卓の上から。
「その『予言書』を書いた人間は、そのあとどうなったんですか?」
「いい質問ね」
チワワの教師が教壇の上から微笑む。チワワの教師は体が小さいので、教壇の上に乗ったまま授業を進めるのである。
「その前にまず質問です。トウキョウワンワンシティに予言者の銅像があるのは知ってますね? この世界に唯一存在する人間の銅像です」
教室中の犬の生徒たちがいっせいに「はーい」とこたえた。
「予言者の前に神様がいました。この犬の世界の創造主です」
教室にいる犬の生徒たちは教壇の上にいるチワワの先生を見つめる。
「犬の神様は人類自身に自分たちの愚かさに気づいてもらおうと考えていました。犬の神様が自分で人類に手を下すのは簡単ですが、人類自身がその愚かさに気づかなければ意味がないと考えて」
「それで金色の首輪を人間の世界に落としたわけですね」
ボストン・テリアの生徒が言った。チワワの先生がうなずく。
「そうです。金色の首輪を拾った人間に、人類の愚かさを人類に伝える役割を与えるために。そしてそれを拾ったのが予言者でした」
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