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『そして、大会側が用意した簡易武器を、一人一個ずつ持つことが許されます。簡易武器は、剣タイプ、棍タイプ、盾タイプの三種類のみです。持ち込み武器、そして魔法の使用は禁止です。頼れるのは己の肉体のみ。行動範囲は、この学園の敷地内全体です。校舎や建物の中は入れません。入った瞬間に失格です』
『な、なかなか殺伐としてるッスね。っていうか、それってやっぱり女子力と関係ないんじゃ……』
『“女子戦”ですからね。やはり最後は武力で白黒つけるのが妥当かと』
なにが妥当なんだ、と会場中がツッコんだのは言うまでもない。
『ルール説明は以上です。時間制限は一時間。逃げ回るだけでは、得点を稼げないということですね。ではこれより最終対決、“最強対決”が始まります。皆さん、この体育館から出たら、その時点で、試合開始です』
運営スタッフによって配られたバッジを胸元に付け、用意されている簡易武器をそれぞれ選ぶ選手たち。
そうこうしている間に、試合開始の合図が鳴らされ、選手たちは慌てて簡易武器を手に、体育館を飛び出していった。もちろんマコも、そのうちの一人だ。
「な、なんでこんなことに……」
今日は平和な対決かと思いきや、まさかの暴力で解決とは。企画部のぶっ飛んだ想像力を忘れていた。
とりあえず校舎内には入れないので、マコは素早い足取りで、中庭の植え込みに身を潜めた。
(でも、たしかにメロディーの言うとおり、負けを恐れて逃げ続けても、自分のバッジは奪われないけど、得点にはならない……。やっぱり“攻め”の姿勢も重要ということね)
マコは、握りしめている簡易武器に視線を落とす。当然というべきか、自分は生粋の剣士なので、剣タイプを選んだ。
(西洋の剣がモチーフの、ちゃっちいソードね。私は刀使いだから、おなじ剣でも扱いが難しいわね……)
とにかく、これは勝負なのだ。勝負事には手を抜きたくないマコとしては、何人かは倒すつもりでいる。
「誰かいるの?」
「っ!」
マコは飛び跳ねる心臓を抑え、植え込みの向こうにいる声の主の正体を探ろうと、そっと様子を伺う。それがマズかったらしい。
「あ、マコか」
「! チェリム……」
チェリム・スライト・チェラウト。庭球部所属の、見知った一年A組の同級生だ。肩下までの栗色のセミロングヘアを、赤いチェックのリボンで留めてツインテールにしている。
「チェリムも、剣タイプなのね」
観念して植え込みから出たマコは、チェリムの持っている簡易武器を、油断なく見た。
「うふふ、マコもね。悪いけど、私だって『女子力女王』の座は渡さないよ」
「同感ね。正々堂々、勝負よ」
前置きは、それくらいで十分だ。
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