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「フッ……ひとつ……汝に、提案があってね」
「提案?」
「フッ……大前提として、吾は“女子力”とやらに興味はない。この大会に参戦したのも、まだ見ぬ美食を求めて実食係に志願しただけに過ぎない。フッ、ただのそれだけだ。成果は予想通り芳しくなかったが」
「あ、へぇー。そうなの」
「吾自身の任務は果たした。フッ……とはいえ、大会の真の王者というものは、純粋に興味がある。そこへ、一目置いていた汝が現れた」
「は、はぁ? つ、つまり、私と手を組もうってわけ?」
「フッ……。選手同士の結託は、ルール上、禁止にはされていない。フッ、汝にとっても、悪い話ではないはずだ」
「………………」
フーディーの言うことも一理ある。こちらに手を貸してやると言うのであれば、それを快く承諾するのもマコとしては、やぶさかでない。
「うーん……ただ、ね。無償で言ってくれるのは嬉しいんだけど」
本来なら喜んで同盟を結びたいところだが、これは勝負なのだ。そこがどうしても引っかかる。
「なにか、不服かい?」
「いえ、不服というわけじゃなくて……。努力もせずに、ただ“ラクな道”を選んで進むのも、私の美学に合わない気がして」
「?」
「より良い道を選択できるときは、やっぱりそれに見合った努力をするべきだと思うのね。だから、ここで私と勝負をして、まずはあなたに勝ちたいわ。話はそれからよ」
マコの冷静な意見に、フーディーは目を丸くしていた。
「……フッ、フフフ、なるほどね」
やがてしきりに頷いたかと思うと、
「フッ、まったく、見事だ……! その意気や良し……! やはり汝を気にかけていて正解だったよ……。フッ、その熱い気持ちに応えて進ぜよう」
支給された剣を取り出し、構える。
「唸れ、我が刃先。フーディー・……ドナイル、華麗に参る……。ゆくぞ……! “黒炎の女剣士”!」
マコに向かって一直線に向かってくるフーディー。美食家というぐらいだから、運動ができるイメージが沸かなかったが、こうしてみると、フットワークは軽そうだ。
「……なるほどね」
だが――。
「? ……?」
フーディーは、今自分の身に起きた状況を理解するのに、時間がかかった。
唯一わかったのは、一瞬のうちに自分の手元から剣が消え、目の前の少女に敗北したということのみだ。
「……フッ、吾の負けだ」
フーディーは両手をゆっくり挙げた。降参のポーズだ。
「フッ、悔いはない……。汝の実力が、吾を上回った……。フッ、それだけのことだ」
ニヒルに微笑み、なにやら一人で納得しているフーディー。それに対して、マコはというと。
(……よっっわ)
笑いを堪えるのに必死だった。
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