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(え、弱ない? フーディー……。ちょっと剣を受け流して、反撃しようとしたら、もう決着ついてたんだけど)
本命の一撃を放つ動作の一歩手前の、不自然に静止したままのポーズを崩して、マコは剣を納めた。
マコは剣士だから察することができる。フーディーは、剣の握り方も知らない、見せかけだけの素人だ。おそらく背中に常時装着しているレイピアも、見かけ倒しだろう。
(私がめちゃくちゃ強いみたいに描写されてるけど、なんなら私、ほぼ何もしてないからね。剣の素人にも程があるわ……)
「フッ……さあ、勝者の特権だ。煮るなり焼くなり、好きにしたまえ。……フッ」
「え? あー、うー、えっと。じゃあ、同盟を結ぼうかしらね。ほら、まだバッジは取ってないから」
「フッ……。嗚呼、ではそうしよう」
いまいち格好はつかないが、とりあえずこの対決において、協力者ができたのはデカい。マコは無理やり納得することにした。
「フッ……。それで、どういう作戦でいくんだい? 二人がかりで背後から襲うか……?」
植え込みに隠れながら、二人は作戦会議を始める。
「フッ……。ここに来るとき、フラン教官とアリス女史を見つけた。教師は最後に残しておくと、厄介だぞ」
「そうね……。でも、さすがに生徒一人に二人がかりは気が引けるわ。先生とか教官とか、明らかに強い魔法使いが出てきたときだけ、協力しましょ。それ以外は、あくまで後方支援でお願い」
「フッ……心得た」
物理的な牽制だと、フーディーはあまり頼りにならないから……というマコの意図は、伝わることはなかった。
「むっ……?」
「?」
植え込みに潜みながら、フーディーが鋭く反応する。
「フッ、どうやら獲物が来たようだ……。見たところ、一人だな。……フッ、どうする?」
「もちろん、やるわ。戦闘は私に任せて」
マコはそれだけ告げると、植え込みから飛び出した。
目の前に立っていた女子生徒は、突然現れたマコに目を白黒させつつも、すぐに目的を察知して不敵な笑みを浮かべる。
「あらあら、誰かと思えば、マコさんではありませんか。奇遇ですね」
限界まで短く切りそろえたウルフカットの、ブロンド美少女。眼鏡のレンズ越しからマコを見据える瞳は、まるで獲物をつけ狙う狼のように鋭い。
「マコさん。貴女には日頃からお世話になっていますが、今回ばかりは、譲る気はありません」
シュテファニー・M・V・ルブラン。愛称はマルキィ。マコと同じ学年の、C組の風紀委員だ。
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