二章

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今まで貴族社会でコレット・ミリアクトでいることが唯一の心の支えだった。 しかしそれすらも捨て去った今、コレットに残るものはなんだろうか。 「役割が欲しいのなら、僕の妻になって欲しいと言ったでしょう?」 「……っ!?」 「僕ほどコレットを必要としている人間はこの世界にいませんから」 (ヴァンはさっきもわたくしに結婚して欲しいと言っていたけど……どうして?) ヴァンが何故これほどまでにコレットを必要としてくれているのか。 その理由はわからないが、今のコレットにとってこれほど心の支えになる申し出はないのかもしれない。 「……ありがとう、ヴァン」 「コレット、誤魔化さないで返事を聞かせてください」 ヴァンは真剣な表情でコレットを見つめている。 何故ヴァンがここまでコレットを必要としてくれるのかはやはりまだわからない。 わからないけれど、ヴァンの手を取りたいと思う。 (こんなわたくしがいいのかしら……) コレットは震える瞼を伏せた。 そんな気持ちを見透かすようにヴァンは「大丈夫、僕を信じて」と言った。
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