三章

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たまたま忙しいだけと思っていたが、今まではリリアーヌに会いにくるためにミリアクト伯爵邸に頻繁に通っていたのにおかしいではないか。 両親にそう訴えかけても、ディオンの行動に口を挟めるわけではない。 それに加えて、両親もリリアーヌに対する要求が増えてくることに気付く。 毎日、体調はどうかと問われて食欲があり熱がなければリリアーヌが大嫌いな口煩い講師をあてがわれてしまう。 朝早くから部屋から出されて、挨拶の練習や社交界のマナーを本格的に学べと言われて驚愕する。 (どうして?お父様もお母様もそんなことは言わなかったのに……) リリアーヌに待っていたのは休みも楽しさもない勉強と厳しい講師たちによるマナーやダンスのレッスンだった。 リリアーヌは体調を言い訳にするも、次第にそれすら許されなくなっていく。 両親も味方をしてくれないし、リリアーヌは苦痛に耐えるしかなかった。 しかしそれも三日ほどで限界を迎えてしまう。 リリアーヌはハラハラと涙を流して、いつものように「嫌だ」と訴えかけた。 こうすれば何もやらなくていいと知っているからだ。 「もう無理、今日は具合が悪いのよっ」 「医師は問題ないと言っているから大丈夫だ」 「リリアーヌ、あなたはミリアクト伯爵家を継ぐのよ!?」 「お父様もお母様も変よっ!今までそんなことは言わなかったじゃない!わたしが具合が悪いって言っているのにどうして休ませてくれないの!?」 「……リリアーヌ」
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