三章

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もうすぐパーティーがあるからと、その日のためにリリアーヌを少しでもよくしたいと両親は言ったが、リリアーヌはそんなことはどうでもよかった。 ただ、今の苦しみから逃れられたらそれでいいのだ。 困惑する両親の前で両手で顔を覆うようにして泣いているフリをした。 (はぁ……こうすれば何もやらなくていいはず。やっと休めるわ) しかしそんなリリアーヌの考えを覆すことが起こる。 「もうミリアクト伯爵家にはリリアーヌしかいないのよ!わかってるのっ!?」 「え……?」 「医者がもう体調は問題ないと言っている以上、大丈夫なはずだ。さぁ、続けるんだ」 リリアーヌは両親を見た。 いつもの優しい表情はなく、まるでコレットに向けるような厳しい顔をしている。 母もそんな父を咎めることはなく頷いているではないか。 (おかしいわよ!こんなことは今までなかったのに……っ!) 今まで両親はすべてリリアーヌの言う通りに動いてくれていた。 ずっと自分の思い通りになっていたはずなのに、少しずつ変わっていることにこの時になって初めて気付く。 日を重ねていくうちに違和感は大きなものになっていく。 父と母は喧嘩ばかりで、リリアーヌにプレゼントをしてくれなくなった。
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