三章

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「ねぇ、どうしてわたしに冷たいの!?」 「はぁ……めんどくせぇ女だな」 リリアーヌはディオンの暗い表情にビクリと肩を跳ねさせた。 「コレットは頭のいい女だったから油断できなかったが、お前の前で取り繕っても意味ないしな。どうせ何もできないだろう?」 「なっ……!?」 あまりの衝撃に声すら出なかった。 別人のようなディオンの姿に空いた口が塞がらない。  しかし次第に言葉の意味を理解するのと同時に怒りで頭がおかしくなりそうになる。 「こんなことお父様とお母様に言ったら……っ!」 リリアーヌがそう言うことを見透かされていたようにディオンは唇を歪めて意地悪そうに笑った。 「ははっ!困ったら全部お父様とお母様に言うなんて笑っちまうぜ」 「は…………?」 「やっぱりお前を選んでコレットを追い出して正解だった。馬鹿で助かる」 ディオンの言葉に苛立ちを隠せない。 「どういうこと……?」 心の中の声が口から漏れていたようだ。 ディオンはクツクツと喉を鳴らしながら答えた。 「コレットは俺のことを常に疑っていた。少しでもミスをしたら証拠を掴んで、父上や親に報告していたんじゃねぇか?」
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