三章

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ディオンはそう言ってリリアーヌをエスコートすることなく、先に行ってしまった。 取り残されたリリアーヌは暫く呆然としていたが、次第に怒りで頭がいっぱいになる。 (どうしてわたしのことをいじめるの!?前はあんなに優しかったのに、嘘ばかり言うなんて信じられない。それにもういなくなった女のことなんてどうでもいいじゃない) コレットが頭がよくて油断できないとディオンが言っていた。 (そんなわけないわ!だって伯爵邸ではあんなに……っ) しかしリリアーヌの気持ちとは裏腹にパーティーで厳しい現実を知ることになる。 リリアーヌが会場に足を踏み入れると針に刺すような視線と嘲笑うような声が聞こえて一歩も動けなくなる。 まるで値踏みされているようだと思った。 ドレスの裾をギュッと握りながらリリアーヌは習ったことを思い出そうと懸命に思考を巡らせていた。 しかし頭の中は真っ白になってしまってその場で動けずにいる。 (ど、どうしましょう。失敗したってまた具合が悪いって言えば。ああ、そうだわ!全部コレットお姉様のせいにすれば……っ) そう思ってハッとする。 もう自分の失態をコレットのせいにすることは不可能なのだ。 コレットがいなくなったことが、こんなにも自分を追い詰めることになるとは思わなかった。 (失敗してもコレットお姉様のせいにできないってこと?)
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