三章

12/66
前へ
/234ページ
次へ
「絶対に嫌よ……!わたしはいかないっ!あんな場所に戻りたくないの」 「リリアーヌ、自分が何を言っているのかわかっているのか!?」 「フェリベール公爵にも申し訳が立たないわ!」 「アイツは悪魔よ!ディオンなんて婚約者じゃなくなればいいのにっ」 「リリアーヌ、あなた何を言っているの!?あなたの婚約者でしょう?いきなり変なことを言わないで」 「ディオンはリリアーヌによくしてくれているだろう!?」 「お父様もお母様もアイツに騙されているのよっ!」 「いい加減なことを言うのはやめなさいっ」 両親の厳しい声と共にリリアーヌは再び馬車に引き摺られていく。 こんな乱暴な扱いを受けたのは初めてだった。 両親が怖くて仕方ない。 リリアーヌは涙を流して反抗していたが、すぐに言いくるめられてしまう。 「コレットお姉様がっ、全部悪いのよ!」 「もうあの女はいないっ!リリアーヌ、お前しかいないのだ。ミリアクト伯爵家を継ぐものとして、もう甘えることは許されないからな!」 「お医者様がもうあなたの病気は完全に治っている、大丈夫だと言っていたの!いい加減、具合が悪いと言って逃げるのはやめてちょうだいっ」 馬車の中でリリアーヌを責め立てる声が響く。 リリアーヌは今までのことがコレットを犠牲にして成り立っているということを今日、はじめて知ったのだった。 (リリアーヌside end)
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加