三章

13/66
前へ
/234ページ
次へ
* * * コレットがミリアクト伯爵邸を出て、もうすぐ一カ月になろうとしている。 当初の予定とは違い、野垂れ死ぬことも娼館で働くこともない。 むしろミリアクト伯爵邸で生活しているよりも心安らぐ時間を過ごしているといえるだろう。 コレットはヴァンから身に余るほどの贅沢をさせてもらっている。 やっぱり働いて返そうとするものの、いつもヴァンにダメだと怒られてしまう。 (わたくしもヴァンのために何かできたらいいのに……) コレットは少しでもヴァンの役に立ちたいと、屋敷の管理を手伝っていたがほとんど来客もない。 ヴァンはこの屋敷はコレットの好きにしていいと言ってくれたのだが絶対に屋敷から出てはいけない条件付きだった。 理由を聞いても「コレットを怖がらせたくないから」の一点張りである。 屋敷が広いので特に問題はないが、コレットはそのことを不思議に思っていた。 (何か、理由があるのかしら……) そう思いつつも居候の身でヴァンの事情に深入りできない。 暇を持て余していたコレットはメイメイにシェイメイ帝国の言葉を習いたいと頼んだ。 話を聞いたのかヴァンがすぐにコレットのためにシェイメイ帝国から講師を呼び、用意してくれた。 コレットの要望に対してすぐに対応してくれるヴァンには感謝している反面、今までの環境と違いすぎて戸惑ってしまう。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加