三章

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「第二王子のウィリアムが生まれて成長した。母も死に僕は完全に不要になったのでしょう。彼はゼゼルド侯爵に僕を殺すように依頼したんです」 「っ、なんてひどいことを……!」 「……はい。それを知った時、僕は絶望しました。生きる気力を失い、ゼゼルド侯爵に殺されるのをただ待っていた」 「…………」 「だけどゼゼルド侯爵が僕を殺すことはなかった。今まで見て見ぬフリをしていたが限界だと、何もかもを捨て去り、異国の地で僕を懸命に育ててくれました。亡くなるその日まで僕に力を与え続けてくれたんです」 そう言って瞼を伏せたヴァンにかける言葉は見つからなかった。 それから今までのことをヴァンは話してくれた。 今までどんな気持ちでコレットに会い、どうやって生きてきたのか。 ヴァンの城での生活があまりにも悲惨で、コレットは話を聞いている最中、涙が止まらなかった。 ヴァンの母親はエヴァリルート王国に嫁いできたあとも相当、酷い目に遭っていたことがわかっている。 シルヴァンが物心つく頃には、王妃がこちらを見る視線には明らかな殺意や憎しみが込められていることに気づいていた。 ヴァンの母は病で亡くなったと言われたが、嫉妬した王妃に毒を盛られてじわじわと嬲り殺されたことを母の侍女から聞かされたのだという。
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