三章

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シルヴァンに宛てられた血が飛び散った手紙にも、もし自分になにかあった時の犯人は王妃だと書かれていた。 それからシルヴァンを『愛している』とも。 母が亡くなってからシルヴァンは共に死んだものとして扱われるようになる。 暫くは母の侍女が守ってくれたが、ウィリアムとの扱いの差に侍女はシルヴァンを連れてシェイメイ帝国に逃れようとした。 しかし失敗してしまい、王妃によって誘拐犯に仕立てられた侍女はシルヴァンの目の前で無惨にも斬り殺されてしまう。 『あとはお前だけだ』 王妃から聞こえたその言葉は今もヴァンの耳に残っているそうだ。 そしてシルヴァンは城に連れ戻されるが、味方が一人もいなくなり第一王子としての立場はなかった。 あの時に侍女と斬り殺してくれたらよかったのにと、そう思うほどに。 国王はそんな状況を黙認していたそうだ。 シルヴァンに声を掛けたこともなく、もちろん庇ってくれることも守ってくれることもなかった。 ウィリアムが成長すると王妃の興味が逸れて、執拗な嫌がらせは受けなくなったものの、シルヴァンは絶望の中を生きながらえていた。
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