三章

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コレットと出会ったのはこの時期で空腹だったヴァンにたくさんのお菓子を与えてくれたり、好きだと言ってくれたことで生きる気力を取り戻しつつあった。 それはコレットを幸せにしたいという夢ができたからだ。 しかしその日の晩にゼゼルド侯爵に暗殺の指示が出された。 コレットの前からヴァンは姿を消すことになったが、ゼゼルド侯爵はシェイメイ帝国までヴァンを逃してくれたそうだ。 ヴァンはその時、コレットに何も言わずに国を出たことをずっと悔いていた。 しかしその時のヴァンには手紙を届ける術はない。 何よりエヴァリルート国王に自分が生きていることがバレてはいけないと思った。 それがゼゼルド侯爵を守ることにも繋がるとわかっていたからだ。 「僕はゼゼルド侯爵に心から感謝しているんです」 ゼゼルド侯爵はヴァンを殺すことなく、シェイメイ帝国に逃げた。 そして身を守る術を教えながら育ててくれたそうだ。 幸い、逃げる前に今まで溜め込んでいたお金を大量に持ってきたからか生活に困ることはなかったそうだ。 「あの場所で疎まれて死を待つしかなかった僕に居場所をくれたんです。彼こそが僕がこの世界で唯一尊敬する人だ」 「……ヴァン」
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