三章

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「そしてゼゼルド侯爵に頼み、シェイメイ皇帝に謁見を申し込んだ。僕の事情を聞いた皇帝はただ〝強くなれ〟と言いました。その意味を初めは理解することができなかった」 「…………」 「しかしシェイメイ帝国で暮らすうちに、その言葉の意味を理解しました。それから僕は死ぬ気で力や知恵をつけてから、再び彼に取り入りました。母を殺したあの女と僕を虐げた奴等に復讐するためならなんだってできた」 ヴァンの手のひらに力が篭る。 母を殺したあの女とは恐らく今の王妃のことだろう。 ヴァンはあの城で空腹に飢えるほどにひどい扱いを受けていた。そう思うのも当然だろう。 「アイツらはすべてを有耶無耶にしました。母は病で亡くなり、侍女は僕を拉致した罪で裁き、僕は事故で亡くなったことにしたそうですよ」 「……っ」 「今はシェイメイ帝国ではこの若さでなかなかいい地位まで上り詰めました。シェイメイ皇帝にも気に入られたからこそ、こうして自由に振る舞えるのですよ」 ヴァンの憎しみが彼を強くした。そう思うとなんだか悲しい気持ちになる。
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