三章

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「そして今、僕と皇帝陛下の思惑は一致しているいうわけです」 「……思惑?」 「えぇ、そのための準備はもう終わろうとしている」 ヴァンの仄暗い表情に背筋がゾッとする、 瞳から光が消えたような気がしたがコレットを見た瞬間、すぐに光が戻る。 「今まで復讐心だけで生きてきました。けれどゼゼルド侯爵はそんな僕を心配したのでしょう……死に際に彼は〝一度だけでいいからコレットに会ってこい〟と言いました」 「わたくしに……?」 「はい。ですが僕は復讐のためだけに動いていた。エヴァリルート王国に入国した際、その思いは強くなる一方だったのですが……そんな時、コレットが僕の前に倒れていたんです」 コレットがミリアクト伯爵家から追い出された日、彼はシェイメイ帝国からエヴァリルート王国へ移動していた。 偶然が重なってヴァンと会うことができたのだとわかる。 こんな奇跡が本当にあるのかと思えるくらいに。 「本当に不思議ですよ。こうしてコレットに触れているとあんなに強い復讐したいと思っていた気持ちが薄らいでいくんです」 やはりヴァンは今まで復讐することだけを目的に生きていたのかもしれない。 「ゼゼルド侯爵はこうなることを見透かしていたのでしょうか。さすがですね……まだ僕にこんな感情が残っているなんて驚きでした」
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