三章

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「……ヴァン」 「それもすべてコレットのおかげで思い出すことができた。でなければ何もかもをめちゃくちゃにしていたでしょう」 コレットは一通りヴァンの話を聞いて自分の無力さに悔しくて堪らなくなった。 ヴァンが苦しんでいたとも知らずに、コレットはいつも自分の話ばかりしていた。 家族関係に悩み、ヴァンに相談ばかりしていた。 ヴァンはコレットの話をいつも真剣に聞いてくれた。 自分だって辛かっただろうに、コレットを励まし続けてくれたのだ。 ヴァンの苦しみを考えると胸が痛い。 「僕はもうコレットの知っている僕ではありません。近くにいる資格はないかもしれない。けれどコレットのそばにいて、こうして触れていたいと思うんです…………軽蔑しましたか?」 コレットはその言葉を否定するように大きく首を横に振った。 「軽蔑なんて……わたくしの方こそヴァンに謝らなければいけないわ。あの時は自分のことばかりであなたのことをもっと気遣えて話を聞けていたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに」 「…………」 「ヴァンの事情を知らないまま自分のことで頭がいっぱいで……自分が恥ずかしいわ」 「あの時、コレットがいてくれたから、こんな僕を好きだと言ってくれたから生きようと思えたんです」
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