三章

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コレットはヴァンの話を聞いて心配なことがあった。 シェイメイ帝国で地位を積み上げたヴァンと、貴族の令嬢でもないコレットが共にいていいのだろうか。 そう考えると不安になってしまうが、それでもヴァンはコレットを必要としてくれている。 (いつまでも弱気なことを言っていてはダメよ。これからはヴァンに釣り合うように、もっと努力しないと……) この話はヴァンが歩んできた人生のほんの一部分なのだろう。 ヴァンは今までとても苦しんできたことだけはわかる。 その苦しみを少しでも減らしてあげたい。そう思えて仕方なかった。 コレットはヴァンの顔を両手で挟み込むようにして掴む。 目を見開いているヴァンを見つめながら、コレットは震える唇を開いた。 「わたくしはヴァンが今までの分も幸せになってくれないと嫌よ」 「……コレット?」 「わたくしでよければ、ずっとそばにいるから。あなたのそばに……っ」 コレットは言葉の途中で唇を噛みながら泣くのを堪えていた。 ヴァンの境遇や気持ちを考えると胸が痛い。 涙がハラハラと頬を伝っていく。 「どうしてコレットは泣いているのですか?」 「ヴァンの、代わりにっ、泣いてるだけよ……」 「……コレットは相変わらずだな」
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