三章

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涙は流れていなかったのが悲しみはこちらに伝わってくる。 ヴァンの口調が元に戻ったのと同時に彼の本心が垣間見えたような気がした。 (もうわたくしは悩まないわ。ヴァンのそばにいたいもの) 彼が望んでくれるのならコレットはそばにいよう。 暫くはヴァンと抱き合っていた。今度は引き離されることはない。 ただ互いの体温を感じたまま目を閉じていた。 「コレット、愛してる。出会った時からずっと僕はコレットが大好きだった」 ヴァンの力強い言葉がコレットの耳に届く。 コレットは恥ずかしい気持ちを抑えながら、ヴァンの大きな手を掴む。 コレットもやっと覚悟を決めることができたような気がした。 ヴァンへの気持ちが確かなものになっていく。 そして自身の頬に寄せてから「わたくしもヴァンを愛しているわ」と言った。 「ずっと前からヴァンが大好きだったの」 「ありがとう……コレット」 二人の気持ちが本当の意味で結ばれたような気がした。 それはヴァンにも伝わったのだろう。 ヴァンは今までにないほどに柔らかい笑みを浮かべてコレットを引き寄せて唇に触れるようなキスをする。 コレットが頬を真っ赤に染めているとヴァンは愛おしそうにこちらを見つめている。 「…………困ったな」 「……?」 「僕は一生、コレットと離れられそうにない」 「ふふっ、そうだと嬉しいわ」
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