三章

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ヴァンはコレットの手を優しく握った。 そんな時、外がザワザワと騒がしいことに気づく。 シェイメイ帝国の馬車は珍しいのだろう。 野次馬がたくさん集まっているのを見て、コレットは身が引き締まる思いがした。 「エヴァリルート王国の建国記念パーティーに、僕はシェイメイ帝国の代表として出席することになっているんですよ」 「……ヴァンが皇帝陛下の代わりに!?」 「えぇ、そうです。忙しい皇帝陛下の代わりに、ね」 ヴァンはそう言って唇をニタリと歪めた。 そこでヴァンは復讐をしようと考えていたということだろうか。 (皇帝陛下の名代を任されるなんて……ヴァンは一体) きっとまだまだコレットには話していないことがたくさんあるのではないかと、そう思った。 「それとミリアクト伯爵家も恐らくパーティーに出席するでしょう。その時にコレットの幸せいっぱいの姿を見せつけたいんです」 「……え?」 「コレットがもう手が届かない雲の上の存在なのだと馬鹿な奴らに知ってもらわなければなりません」 「……!」 「もしそこで愚かなことをするようなら……奴らをその場で処分しましょう。そうすれば二度とコレットを苦しませることはない」 低い声でそう呟いたヴァンが何をしようとしているのかコレットにはよくわからないが、ヴァンはコレットのために伯爵家に何かするつもりなのだろうか。
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