三章

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コレットが考え込んでいるとヴァンに思いきり手を引かれて思考は遮られてしまう。 「今日はそのためのものを準備しに来たのですよ。さぁ、コレット……胸を張ってください」 「ちょっと待って、ヴァン……!」 ヴァンは王都でも指折りの高級なブティックへと足を踏み入れる。 それには店員も驚きを通り越して困惑していたが、メイメイがお金がびっしりと詰め込まれているケースを見せると、すぐにVIP扱いで別部屋へと案内された。 「時間があったら絶対にオーダーなのですが、今回は致し方ありませんね」 「そんな豪華なものは……」 「やはりドレスは華やかでいいですね。日常でも使えるものも用意してください」 ヴァンは次々にドレスや服を選んでコレットにあてがっては購入すると言って預けている。 コレットはヴァンを引き止める意味でも慌てて声を上げる。 「ヴァン、待って!こんなにたくさんいらないわ」 「コレットはいつも明るい色のドレスを着ていましたよね?懐かしいです。僕はオレンジ色が似合うと思うのですがどうでしょうか?」 「……ヴァン、わたくしは」 明るい色のドレスを見ると「羨ましい」「ずるい」と涙するリリアーヌと、怒っている両親の表情を思い出してしまう。 次第にコレットは地味な色を選ぶようになっていった。
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