三章

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二人は鋭い視線でリリアーヌとディオンを睨みつけている。 スッと背筋が凍るような二人の表情は普段とは別人のようだ。 ディオンは恐怖に震えながら小さく両手をあげた。 リリアーヌは口端から泡が出て、苦しそうに顔を歪めている。 コレットはそんな様子をただ呆然と見つめることしかできなかった。 『……ヴァン様、許可を』 『いつでも殺れますが、どういたしましょうか』 メイメイとウロはシェイメイ帝国の言葉でヴァンに許可を求めている。 ヴァンから許可が出たら二人は刃物を持っている手を動かすつもりなのだろうか。 コレットを守るように背後に立ち、肩に手を添えたヴァンはいつもよりずっと低い声で言った。 『……やめろ』 メイメイとウロはヴァンの言葉を聞いてすぐに腕を下ろす。 そして腰を丁寧に折ってサッと身を引いた。 リリアーヌの首からは一筋の血が伝い、そのまま力が抜けたのかペタリと地面に座り込んでしまった。 ディオンも手を上げたまま動けないでいる。 メイメイとウロは音もなくこちらに戻ってきて、メイメイはスカートの中にナイフを収納している。 ウロは一振りで槍を分解して折り畳むとジャケットの中に一瞬で武器を仕舞いこむ。 今、二人が武器を持っていたことを誰が気づいただろうか。 コレットが声をかける暇もなく、首の薄皮一枚を切られたことに腹を立てたリリアーヌが金切り声を上げる。
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