三章

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ヴァンから放たれる威圧感にディオンは言葉も出ないのか、リリアーヌを見ながら目を右往左往させている。 一応、リリアーヌを助けようとしているのか片手が上がるが、すぐに下がってしまい後退していく。 ヴァンの反対側の手は腰に携えている剣の柄が握られていることに気づいてコレットはヴァンの元に一歩踏み出した。 先ほどヴァンが言っていた『僕がヤる』というのは、直接自分がリリアーヌに手を下すという意味だとわかってしまったからだ。 「──ヴァン、やめてっ!」 コレットはヴァンの背中に手を伸ばして服を引く。 そして彼の行動を止めようと腰に腕を回して縋りつく。 「ッ、コレット!?」 コレットの行動に驚いたのか、ヴァンはリリアーヌから手を離してこちらを振り返ろうとしている。 「ヴァン、そんなことをしたらダメよッ」 「…………コレット」 「あなたに手を汚して欲しくないわ」 ヴァンが目を見開いて驚いていることにも気づかずに、コレットはヴァンを引き止めるのに必死だった。 ヴァンの手から力が抜けて、リリアーヌの体がドサリと地面に落ちたのがわかった。 「ゴホッ、ゴホ……ッ、ゲホ」 リリアーヌが思いきり咳き込む声が聞こえる。 「コレット、離してください」 「……っ!」
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