三章

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反射的にリリアーヌの方に向かってコレットは手を伸ばす。 彼女を救うように一歩踏み出そうとしたのを見てか、ヴァンはコレットの腕を取り自分の方へ引き寄せる。 コレットは改めて自分が何をしようとしていたかに気づいて思わず唇を噛んだ。 あんなにひどいことを言われていたのに、コレットは無意識にリリアーヌに手を差し伸べようとしたのだ。 次第にリリアーヌが何かを呟いている声が聞こえてくる。 それは次第に大きくなりコレットの耳に届く。 「わたしにっ、こんなことをして許されないんだから」 「……っ!」 「絶対に許さない!今度こそお前を……っ」 涙を流しつつもコレットを睨みつけるリリアーヌを見て、固まってしまったかのように動けなくなる。 指先が急速に冷えていき、息が詰まるような苦しさに襲われる。 しかしリリアーヌの声を掻き消すようにヴァンがコレットに声を掛ける。 「コレット、そろそろ行きましょうか」 「……え?」 ヴァンはリリアーヌからコレットを引き離すように肩を抱いて歩いていく。 コレットはリリアーヌとディオンに背を向けて、ヴァンに促されるまま足を進めた。
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