三章

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「……コレットッ!」 叫ぶようにコレットを呼び止めたのは、先ほどまで何も言わずに黙っていたディオンだ。 コレットは足を止めると少しだけ首を捻り振り返る。 ディオンは次第にこちらに近づいてくる。 コレットに触れて欲しくないといいたげにヴァンが体を寄せるが、ディオンには見えていないようだ。 「おいっ!コレット、どういうことだ……!」 「……っ」 「ミリアクト伯爵にどう説明しろっていうんだよ!どこの娼館に勤めっ……」 ディオンはコレットに「どこの娼館に勤めているのか」と問いかけようとしたのだろう。 しかしディオンの言葉が最後まで出る前に、ヴァンはコレットにも見えない速さで剣を抜くとディオンに向けた。 先ほどのリリアーヌと同じように、首に食い込む剣先にディオンは恐怖に震えて動けないでいる。 「お前が元婚約者か?コレットの名前を軽々しく呼ぶな」 「……ぁ、ッ」 「これ以上、口を開けばその首を斬り落とすぞ?」 ヴァンがそう言っているにもかかわらず、ディオンは気が動転しているのか「ど、どこの娼館に勤めているのか気になっただけで……」と呟いてヘラヘラと笑いながら誤魔化そうとしている。 しかしヴァンはその言葉に怒りを露わにしているのか剣を持つ手に力が篭る。
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