三章

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「娼館だと……?コレットは僕の大切な女性だ。その目障りな女と共に今すぐに僕の前から消えてくれ」 「……は、っ」 歯がカチカチと擦る音が聞こえた。 ディオンはヴァンに睨まれてすぐに唇を閉じたまま何度も小さく頷いている。 コレットは慌ててヴァンの袖を引いた。 これ以上、騒ぎを大きくしたくないと思ったからだ。 「ヴァン……!」 「…………。コレットがそう望むなら」 ヴァンはコレットの意思を優先するように剣を下ろすと、呆然としながら震えているディオンに背を向ける。 そしてウロとメイメイに指示を出すために口を開く。 『ウロ、メイメイ、あとは任せた。僕はコレットと先に馬車に戻る』 『かしこまりました』 『お任せください』 ヴァンに腕を引かれコレットは足を進めた。 二人がメイメイとウロに何をされてしまうのか気になったコレットがチラチラと背後に視線を送っていることがわかったのか、ヴァンは安心させるように「手荒なことはしませんよ。場を収めるだけです」と言った。 コレットはその言葉にホッと胸を撫で下ろす。 (さっきはメイメイもウロもヴァンもまるで別人のようだった……どちらが本当の姿なのかわからなくなるわ)
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