三章

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コレットの目の前にいるヴァンは優しくていつも笑っているけれど、リリアーヌやディオンに接するヴァンは震え上がってしまうほどに恐ろしいと感じた。 けれど今まで一人で生きてきたコレットにとって、ヴァンがそばで守ってくれたことが嬉しかった。 (ヴァンがわたくしの味方をしてくれた。それだけで幸せだわ) コレットに触れている手は大きくて頼もしくて、とても温かいと感じる。 ヴァンと共に馬車に乗り込んでから隣でコレットの固く握っていた手を解くようにして握ってくれた。 冷たくなった肌が次第に温もりを取り戻していく。 (ヴァンがいてくれて、本当によかった) もし一人でいる時にリリアーヌやディオンと対峙したら、きっと黙って時が過ぎるのを待つことしかできなかったかもしれない。 今までミリアクト伯爵家にいた時と同じように……。 コレットはヴァンがそばに寄り添ってくれる安心感からか、じんわりと涙が溢れてきてしまう。 馬車に乗り、小さく震えているコレットの様子に気がついたのかヴァンが慌てている。 「コレット、どうかしましたか?」 「……っなんでも、ないわ」
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