三章

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ヴァンと夫婦になる。改めてそう言われても実感がない。 ないけれど同時にこんなに嬉しいことがあっていいのかと思ってしまう。 ヴァンと結婚したいと思っていたが、その夢は父によって絶たれ、ヴァンもコレットの前から姿を消してしまう。 それからは地獄のような日々だったけど、運良くこうして再会できたことは幸運だったと思う。 ヴァンもあの日からコレットをずっと想い続けてくれた。 それが何よりも嬉しいのだ。 (わたくしも、これからはずっとヴァンのそばにいて、彼を支え続けていきたい) コレットはヴァンの手の上に添えるようにして、手のひらを重ねた。 「わたくしも……」 「コレット?」 「名前を書かせて。早くヴァンと夫婦になりたいの」 コレットのほんのりと頬が赤くなっていく。 言葉にするのは恥ずかしいけれど、今はきちんと気持ちを伝えるべきだと思った。 「……ありがとう、コレット」 「こちらこそありがとう、ヴァン」 「ああ、夢が叶った……嘘みたいだ」 コレットが立ち上がるとヴァンはコレットを優しく抱きしめた。 背に回る逞しい腕に抱きしめられると胸がいっぱいになっていく。
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