三章

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言っても無駄だとわかっていたのもあるが、今になって何故あんな場所に逃げもせずに執着していたのかはわからない。 コレットが領地の仕事を肩代わりしても、リリアーヌより地味な格好をして大人しくしていたとしても、褒められることも認められることもない。 ミリアクト伯爵家のためにディオンを監視していたり、パーティーでリリアーヌを注意して連れ帰ったりしたことも無駄だったのだと自由になった今だからわかる。 空はオレンジ色に染まり、日が沈んでいく。 風が冷たくなるのを感じて、もう夜が近づいているのだと思った。 (ミリアクト伯爵家から出て行った日は、どんな空だったかしら) もうすぐ月と星が夜空で輝くのだろう。 ミリアクト伯爵邸でコレットは眠れない夜はずっと空にある星を見ていた。 遠くを眺めていたコレットだったが、ふとヴァンの手が髪に触れた。 「コレット、楽しかったですか?」 コレットはアレクシアとエルザを呼んでもらったのに、まだヴァンにお礼を言っていないことに気づく。 「ヴァン、二人をここに呼んでくれてありがとう」 「コレットが喜んでくれて嬉しいですよ」 「とても楽しかったわ……喋りすぎて喉が痛いくらい」 「メイメイ、コレットに蜂蜜と薬を」 「かしこまりました」
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