四章

1/63

1151人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ

四章

(リリアーヌside) リリアーヌはドレスを買いに行くことなど忘れて呆然とその場に立ち尽くしていた。 首の切り傷がジクジクと痛む。 (なに……今、何が起きたの?) リリアーヌの前には美しく輝きを取り戻したコレットの姿があった。 リリアーヌはコレットが出て行った後のことを思い返していた。 最近、リリアーヌはミリアクト伯爵邸の自分の部屋に篭りきりだった。 コレットがいなくなってから、責任を擦り付けることもできずに、すべてリリアーヌのせいになっていく。 リリアーヌの何もできない姿を見て、侍女や従者たちの冷たい視線が針のように突き刺さる。 それが嫌で具合が悪いふりをするも、父と母によって用意された常駐の医師により、すぐに仮病だとバレてしまう。 リリアーヌ自身の評判がどんどんと落ちていくのを肌で感じていた。 何もできないのだと知られてしまう。 失望したといわんばかりのため息が怖くて仕方ない。 今まで輝いていた宝石が道端の石ころだと気づくように皆がリリアーヌを見限っていく。 リリアーヌも講師に教えてもらってがんばろうと思った。 あのコレットができることならば自分にもできると。 しかし講師たちはリリアーヌをまったく贔屓してくれない。 それにコレットの足元にも及ばないどころか子供よりひどいと言う。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1151人が本棚に入れています
本棚に追加