四章

5/63

1151人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
「ディオンに色々と教わってきなさい」と言われて、リリアーヌは嫌な予感をヒシヒシと感じていた。 何故両親に一緒に来てくれないのかと問うと「婚約者がいるじゃないか」と取り合ってもらえない。 「お父様とお母様と一緒がいいの!ねぇ、いいでしょう?」 いつものように甘えた声を出す。 リリアーヌがそう言えば両親は絶対に従ってくれる。 これ以上、ディオンに好き勝手されては堪らない。 しかし返ってきたのは予想外すぎる反応だった。 「甘えるな」「わがままを言わないで」 両親に返された時には驚きすぎて言葉が出なかった。 以前は「リリアーヌは本当に可愛らしいな」「もちろんよ」と言ってくれていたのに……。 リリアーヌは暫くその場から動けなかった。 約束の日、ディオンは笑顔を浮かべて立っていた。 大好きだったその笑顔も今は恐怖すら感じる。 それなのに両親は聞いた話とディオンが違うからと安心したようにホッと息を吐き出している。 ディオンは両親の前でだけ、いい婚約者のふりを続けている。 リリアーヌがそんなディオンが大っ嫌いだった。 馬車の中でディオンの態度は豹変した。 嫌なことばかり言ってくるし、楽しそうにリリアーヌを馬鹿にしてくる。 しかも町についた途端、リリアーヌのドレスを買うためのお金を奪い取ったのだ。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1151人が本棚に入れています
本棚に追加