四章

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となれば、ここで苦しんでマナーを学ぶ必要もない。 シェイメイ帝国という新しい土地に行って、贅沢をしながら暮らすことができる。 両親と離れるのは少し寂しい気もするが、リリアーヌを可愛がってくれない両親なんて必要ないと思い始めていた。 仮病も通じなくなり、リリアーヌを追い詰めようとする二人はもういらない。 ディオンと結婚したって、きっと遊んでばかりで役に立たないだろう。 勉強は面倒だし、マナーも退屈。 これからも何もせずに可愛がられて生きていきたい。 (またコレットお姉様にディオンを押しつければいいのよ。それですべての問題が解決するわ……!こうなったら絶対にコレットを娼館から見つけ出さないと) リリアーヌは自分の計画がうまくいくと疑わなかった。 コレットに鉢合わせた日から一週間。 父や母が娼館を探し回っても、やはりコレットらしき人物は見つからなかった。 それに客人にシェイメイ帝国の人間が訪れたことはないという。 (どういうことよ……!娼婦でもないのになんでわたしよりも美しくなって、いい男を連れているなんて変でしょう!?) リリアーヌの苛立ちは募るばかりだ。 爪を噛んでばかりいるせいか爪先がギザギザしていた。 それすらもコレットのせいだと思えて仕方がない。 あんなにも近くにいたのに、知らない間に引き離されていく。 それが恐ろしいのと同時に憎いのだ。
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