四章

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「……?」 「コレットは何も心配する必要はありませんから」 「ヴァンはいつもそればっかり……わたくしにもできることがあれば手伝うわ」 「気持ちだけで十分です。コレットには今まで苦労してきた分、笑っていて欲しいんですよ」 もうすぐ森を抜けるというところで、馬に乗り先導していた二人が足を止めるように声をかける。 御者がヴァンに『囲まれています』と小窓から顔を出して呟いた。 『愚かだな……すぐに捕らえろ』 『かしこまりました』 コレットが心配そうにしているとヴァンは優しくコレットの体を抱きしめて「暫く待っていてくださいね」と言って笑った。 なるべく音が聞こえないようにするためなのか、ヴァンはコレットを抱きしめて耳を塞いでいるのは気のせいではないだろう。 コレットはヴァンの胸に耳を当てて心臓の音を聞きながら待っていた。 時折、聞こえる重たい音と金属が打つかる音が遠くで響いているような気がした。 『ヴァン様、終わりました』 『一人残らず縛り上げろ。すぐ行く』 黒い布に覆われて目元しか見えない護衛が扉から顔を出して答えた。 コレットはメイメイやウロが心配になり窓から覗き込もうとするが、そんなコレットの行動を見越してか、外を見られないようにヴァンは手早くカーテンを閉めてしまう。 コレットが抗議しようとすると馬車の扉からメイメイとウロが顔を出す。
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