四章

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ミリアクト伯爵はヴァンの顔を知らないことと若い年齢から下位貴族だと決めつけているようだ。 ヴァンをシェイメイ帝国の人間だとは思っておらず、見下している。 それにヴァンはエヴァリルート王国とシェイメイ帝国の血が混じっている。 今の格好も相まってエヴァリルート王国の貴族だと思われるのかもしれない。 先ほどまで視線を逸らしていたコレットと目が合ったことで図星だと判断したのだろう。 コレットが結婚しているのにシェイメイ帝国の金持ちの男と関係を持ち、不貞行為をしていると信じきっているようだ。 もし事実ならばコレットに未来はない……事実ならば、だ。 「シェイメイ帝国の人間を誑かしておいて、まさか平然と結婚しているとはっ!」 「本当よ!よくも平気な顔でこの場に出れるわね。それで私たちに復讐しようと思ったのかしら」 そうだと決めつけたミリアクト伯爵と夫人は先ほどとは一転して自信満々に声を張り上げた。 「生きるために必死なのね!あんなに地味なフリをしていたのに、今はまるで悪女じゃないっ」 リリアーヌの言葉にジクジクと心の傷が痛む。 そもそもコレットを苦しめて、地味でいるように仕向けたのはリリアーヌ自身だ。 コレットからギリギリと奥歯が擦れる音がした。 コレットの表情の変化を見て三人の唇が大きく歪む。
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