四章

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ミリアクト伯爵夫人が慌ててリリアーヌの口を塞ぐ。 くぐもった声を上げて荒く息を吐き出しながら、こちらを睨みつけるリリアーヌに病弱だった面影はまるでない。 両親が二人ががりで押さえ込んでいるのに、力ずくでもがいて抜け出そうとしている。 自分よりも幸せそうなコレットを見て許せないのだろうか。 しかし今のコレットにとっては雑音でしかない。 周囲はリリアーヌの口の悪さに驚愕している。 いくらマナーを教えたとしても、根本的な部分と自分が一番であることが当たり前であるリリアーヌにとって、この状況は不服なのだろう。 ヴァンはディオンよりも背も高く端正な顔立ちをしている。 好みもあるだろうが大人としての余裕や色気がある。 そんなディオンは今では三人の後ろに隠れて爪を噛んで何かに怯えている。 以前、街で啖呵を切ってきたのが嘘のようだ。 (ディオン様の様子がおかしい。一体、何に怯えているのかしら……) リリアーヌのようにコレットに対して興味を示すこともない。 「平民になったかと思いきや何を企んでいるの!?わたしたちに復讐しようとしても無駄なんだから!身の程を知りなさいっ」 「…………」 「あんたが幸せになれるはずないっ、わたしが一番なの。全部わたしのものなんだから!なんでわたしばかりがこんな目にあわなきゃいけないのよ……!」
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