四章

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フェリベール公爵はヴァンが何が言いたいかわかったのだろう。 ギリギリとこちらに音が聞こえてくるほどに歯を噛み締めている。 「……ッ、余計なことをしおって!この大馬鹿者がっ」 ドコッという重たい音と共にディオンは顔面を殴られて床にうずくまる。 周りの夫人や令嬢たちから小さな悲鳴が漏れ出た。 フェリベール公爵の怒りは収まらないようで、ディオンの首元を掴んで持ち上げている。 「いい加減にしろ!家名に泥を塗り、迷惑ばかりかけてっ!どう償うつもりだッ、このっ!」 いつも冷酷で表情を見せないフェリベール公爵の怒号にエヴァリルート王国の貴族たちは驚いている。 ここが公の場だということも忘れるくらいだ。フェリベール公爵の怒りは相当なものだろう。 しかし再び腕を振りかぶったフェリベール公爵を片手で止めたヴァンはニッコリと笑みを浮かべながら問いかけるように言った。 「どう責任を取ってくださるのでしょうか。あなたの息子が愛おしい妻が乗った馬車に野盗を使い奇襲を掛けたんです」 「くっ……!」 「こ、これは……違う、俺じゃないっ!」 口篭るフェリベール公爵の代わりにディオンが震える声で叫ぶ。
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