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無様に足元に縋りつくディオンを完全に無視している。
そして王妃はヴァンの言葉に引っかかるものがあったのか怪訝そうに眉を顰めている。
「何を言っているの?あなたの母親なんて知らないわ」
「…………」
ヴァンは王妃の言葉に息を止めた。
なんとか怒りを堪えたのだろう。
唇を歪めてニコリと笑ってはいるが額には青筋が浮かぶ。
「……まだ思い出せないのですか?」
「だから知らないと言っているでしょう!?何度も言わせないで」
「僕の本当の名前はシルヴァン……シルヴァン・ル・エヴァリルートですよ」
「──ッ!?」
「思い出しましたか?」
ヴァンの言葉に会場に衝撃が走る。
王妃の目はこれでもかと見開かれていた。
「嘘……だって死んだはずよ。なんで……っ」
その声はハッキリとコレットの耳にも届いた。
ヴァンはその問いに答えるように歪んだ唇を開く。
「残念ながらこうして生きていますよ。恩人が僕を救い育て、母の生家が力を貸してくれた。そして今はシェイメイ帝国の繁栄のために働いています」
「……っ、嘘よ!ありえないわ」
「そして手に入れたんです。母を殺して僕を虐げ続けたエヴァリルート王国の王族を潰す力を……」
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