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ヴァンの拳は怒りからか震えている。
コレットはどうするべきか迷ったが、ヴァンの手を掴んで優しく握った。
少しは気持ちが落ち着いたのか、ゆっくりと息を吐き出したヴァンは再び口を開く。
「……本当は国を焼き払い、潰してしまおうかとも思ったのですが、妻が故郷を消し去ることを望まなかった。僕と同じように家族から虐げられ続けたのに」
ヴァンの言葉に合わせてミリアクト伯爵と夫人の肩が跳ねる。
しかしリリアーヌは納得できないのか、空気を読むことなく叫び声をあげた。
「わたしは悪くないのっ!全部コレットお姉様のせいでしょう?こんなことをするなんてひどいわ!わたしたちがどうなってもいいと言うの!?」
ヴァンが剣の柄を強く握った。
「コレット、目を閉じて」
「…………はい」
コレットはそっと瞼を閉じた。
メイメイがコレットを庇うように肩を抱く。
ヴァンが一歩踏み出したのかコツリとブーツの音が聞こえた。
「お前さえ言うことを聞いていればうまくいったのにっ!わたしは幸せになれ──ッ!?」
重たい音と共に大きな悲鳴が響く。
しかし次第にその悲鳴は何かを切る重たい音と共に消えていった。
静まり返る会場でヴァンがウロたちに指示を出す声が聞こえた。
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