一章

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「もしかして寒いのですか?」 「……え?」 「すみません、気が使えなくて。コレットが寒くないようにもう一枚、掛けるものを持ってきましょう」 「ぁ……」 コレットは何も答えられずに口篭る。 沈黙の後、伸ばされた大きな手を見て思いきり瞼を閉じる。 しかしサラリと髪を整えるように指が滑っただけで何も危害を加えられることはない。 「二日も眠っていたのですよ?無事、目が覚めてよかったです」 「……!」 「コレットの体が冷たくなっていて心臓が止まるかと思いました」 「あなたが……わたくしを?」 「もちろんですよ。コレット」 コレットの体調を心の底から案じてくれているのが伝わってくる。 何故ここまで親切にしてくれているのか不思議だった。 親しげな態度に違和感を持ちつつも、もう一度、青年に視線を送る。 瞳を見ていると何故かはわからないが胸騒ぎがした。 (わたくしはこの人をどこかで……?) 何かを思い出しかけたところで、コレットの目からハラリハラリと涙が頬を伝っていく。 震える手のひらで頬を撫でると、しっとりと濡れる指。
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