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(涙が……。わたくし、生きているのよね?これは夢じゃないの?)
死の恐怖が消えて、安心感が込み上げてくる。
もしこの青年が助けてくれなかったらコレットはどうなっていたのか。
あの場で寒さに震えながら死んでいただろう。
そう思うと今更になって恐怖が襲ってくるのと同時に、自分の無力さに悔しさが込み上げてくる。
青年はコレットが泣いている姿を見て、目を見開いている。
スッと伸ばされた手はコレットの涙を優しく拭った。
コレットは困ったようにこちらを見る青年を見てハッとする。
そして今は怖がっている場合ではないと、慌てて頭を下げた。
「あのっ、助けてくださりありがとうございます……!」
コレットがそう言うと青年は、にっこりと優しい笑みを浮かべた。
記憶力には自信があったコレットだったが、やはりこの青年が誰かがわからない。
コレットの名前を当然のように呼ぶのは、アレクシアかエルザくらいだ。
問いかけるか迷ったが、恐る恐る唇を開く。
「わたくしのことを知っているようですが、どこかでお会いしたことがあるのでしょうか?」
「……」
「申し訳ありません。どうしても思い出せなくて……」
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