一章

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父はコレットがディオンと婚約する少し前にリリアーヌを是非、ウィリアムの婚約者にと勧めていたが病弱故に断られていることを思い出す。 ウィリアムには今、婚約者はいないが彼は素行も悪くお伽話なような完璧な王子様とは程遠い。 あまり令嬢たちからの人気はないそうだ。 王妃の性格を考えても進んで嫁ぎたいと思う令嬢もいないだろうがコレットの親友の一人、侯爵令嬢のアレクシアには王家から婚約者候補として打診がきているらしい。 コレットの友人であり侯爵令嬢のアレクシアはとても美しい令嬢だ。 しかし幼馴染の令息と結ばれたいと願っていた。 力になりたいと思っていてもミリアクト伯爵家から出られないコレットにはどうにもできなかったことを今になって思い出す。 メイメイは手早く紅茶や軽食をワゴンから取り出して、ベッドサイドのテーブルに置いていく。 「召し上がってください。体が温まりますよ」 メイメイからカップを受け取ろうとするが、うまく力が入らない。 するとメイメイは紅茶のカップを持ってコレットの前に差し出してくれた。 「無理はなさらないでください」 「はい、ありがとうございます」 「私たちは使用人ですので、そのように言っていただく必要はございません」
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